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家主が消費税分の増額を借主に請求出来ないとされた事例

2007/03/31 11:00

判例紹介


 家主が家賃増額の方法によることなしに消費税3%分の増額を借家人に当然には請求出来ないとされた事例 大阪地裁平成2年8月3日第20部判決、判例タイムズ741号165頁以下)


 (事案)
 XはYに対し昭和60年2月20日、本件建物を賃料月額5万円で賃貸していた。Xは右賃料を不相当として昭和63年2月1日より月額15万円を相当として増額請求し、更に平成元年4月1日から消費税法が施行されることになったので、平成元年3月末頃Yに対し3%を付加して支払うよう求めたがYはこれを拒否した。判決は昭和63年2月1日以降平成元年3月31日まで1カ月7万5108円、平成元年4月1日以降は1カ月7万6235円を相当として、その余のXの請求を棄却した。


 (判旨)
 「消費税は事業者に負担を求めるものではなく、事業者の各段階の売上に課税され、最終的には消費者に課税する税金であり、いわば事業者を通じて消費者に課税するものであるから、消費税法が事業者から消費者にその税金の適正な転嫁がなされることを予定にしているということはできるが、同法が消費者に事業者に対する消費税の支払義務を課したものとか、若しくは、事業者に消費者に対する私法上の請求権として転嫁請求権を認めたものとまでは解することが出来ない」。


 「原告が免税者であり、本件建物に消費税を負担した補修費用の出損をした等の事情もないことは弁論の全趣旨から明らかであり、また原告が免税者であるが、その納税義務の免除を受けることなく、消費税を納税するものであること等の特別の事情も認めることはできないので、賃料増額事由としては、消費税法が施行されることにより生じることが当然予想される物価の上昇の点のみを考慮することになるところ、消費税法が施行により物価が消費税相当分だけ上昇するとは政府の見解にもないことで、本件において、諸般の事情を考慮して、消費税の施行による物価上昇を1.5%とみて、前記認定の月額7万5108円の1.5%の1127円(円未満4捨5入)の増額を認めることとする」。


 (寸評)
 判旨には異論がないと思われる。免税業者である家主が消費税の上乗せを請求するのは実質上は家賃の値上げであり、借家法の増額請求権の行使によってなすべきであるという点は、当然のことである。


 問題は、納税義務者である家主の場合においても転嫁請求権を当然に家主に認めないとするこの判決は、消費税の解釈として異論がなく、実質上のトラブルの解決の参考となるので紹介した。     1992.7.


(東借連常任弁護団)


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新賃料の合意がないことを理由に更新料支払義務を排斥した事例

2007/03/30 09:54

  判例紹介


 更新料支払特約があった場合において、新賃料につき合意が成立しておらず更新料が具体的債務として発生していないとされた事例 東京地裁平成5年2月25日判決、判例タイムズ854号)


 (事案)
 賃借人は、店舗賃貸業者であるが、平成元年6月、飲食業の店舗として転貸する目的で、マンション1階にある店舗を賃料15万円で賃借したが、その契約書には「賃借人は3年後の更新において新賃料の2カ月分を更新料として支払う」との特約があった。


 賃貸人は、更新時期に際して、賃料を20万6000円に増額請求し合わせて更新料の41万2000円、それに敷金50万円の請求(契約時に差し入れるべきものが3年後に延期されていた)をした。賃借人は、改定賃料の折り合いがついた後に更新料を支払うと回答したが、賃貸人は、更新料と敷金不払を理由に契約を解除して、建物明渡の訴訟を提起した。


 本件判決は、いまだ更新料支払義務は発生していないとして賃貸人の明渡請求を排斥した。更新料に関する部分の判決要旨は次のとおり。


 (判決要旨)
 「被告は、原告に対して、3年後の更新時において新賃料2カ月の更新料を支払う約束をしてはいたが、新賃料の具体的な算定が予め合意されていたことを認めるに足りる証拠はない。
 新賃料の金額は、第一次的には、更新時における双方の合意によって定めることが予定され、従って更新料も右金額の確定をまって初めて、その2カ月分相当額の具体的債務として更新時に発生するものといわなければならない。
 本件においては、いまだ合意が成立していないことが明らかであるから、新賃料の金額の確定を前提とする更新料も、本件解除前において、その具体的債務として発生していなっかたものというべきである。この点について、原告は、被告が少なくても1カ月15万円の従前賃料を基準にした更新料30万円の支払義務を有していた旨主張するが、更新料の算定方法は前記のとおりであるし、原告のような性急な交渉態度は、いたずらに被告を困惑させるものというほかなく、こうした点にかんがみると、被告に原告主張のような右金額による更新料支払義務があったとまでいうことはできない。」


 (説明)
 本判決は、「新賃料が合意されていないから更新料も確定できない」と判断したが、支払特約更新料の支払義務を排斥する論理の1つを示している。
 賃借人は、新賃料が合意されていないとしても従前賃料の2カ月分の更新料支払義務が肯定される危険を避けるために、契約解除後であるが15万円の2カ月分の30万円を供託していたが、本判決は、従前賃料の2カ月分についても、支払義務はなかったと判断した。


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更新料支払特約があっても法定更新の場合は更新料の支払義務はない

2007/03/29 11:36

 判例紹介


 更新料支払特約には、特段の事由がない限り、法定更新の場合を含まないとされた事例 東京地裁平成4年1月8日判決、判例タイムス825号)


 (事実概要)
 賃借人は、昭和56年10月から店舗(ゲーム喫茶)建物を賃借したが、昭和63年10月の契約期間到来に際して、43万1570円の賃料を50万621円に値上げ請求され、また契約書に定められている更新料として賃料の2カ月分の請求を受けた。


 (判決の要旨)
 「本件賃貸借契約書には『本件契約の更新の際は、賃借人は賃貸人に対し更新料として新家賃の2カ月分相当の金額を支払うものとする』と規定しているが、文言上は合意による更新のみを指すのか法定更新を含むのか判然とせず、解釈によって判断するしかない。『新賃料』という表現からは、通常新賃料が定められることのない法定更新は念頭に置かれていないと考えられる。


 ところで、一般に更新料を支払う趣旨は、
賃料の不足を補充するためであるとの考え方、
期間満了時には異議を述べて更新を拒絶することができるが、更新料を受領することにより異議を述べる権利を放棄するものであるとの考え方、
あるいは期間を合意により更新ことによりその期間は明渡を求められない利益が得られることの対価であるとの考え方などがある。


 右の賃料補充説にたてば、法定更新と合意更新とを区別する理由はないが、そのように推定すべき経験則は認められず、かえって適正賃料の算定に当たっては、更新料の支払の有無は必ずしも考慮されておらず(実質賃料を算定する際には更新料の償却額及び運用益を考慮することはあるとしても)、また実質的に考えても、賃貸借の期間中も賃料の増減請求はできるのであるから、あえて更新料により賃料の不足を補充する必要性は認められないのに対し、賃貸人は更新を拒絶することにより、いつでも期間の定めのない契約に移行させることができ、その場合は、期間の経過を待たずに、正当事由さえ具備すれば明渡を求めることができるのであるから、賃借人においては、更新料を支払うことによりその不利益を回避する利益ないし必要性が現実に認められること等を総合考慮すると、特段の事由がない限り、更新時に更新料を支払うというのみの合意には、法定更新の場合を含まないと解すのが相当である。


 (解説)
 更新料支払特約がある場合、法定更新のときも更新料の支払義務があるのかどうかについては、最高裁昭和57年4月15日判決がこれを否定しているが、その後も、法定更新でも更新料支払義務があるとする判決がなされることがある。
 本判決は、法定更新の場合には、約定更新料の支払義務はないと判決し、その理由も詳細である。特に、更新料とは賃料を補充するものであるから根拠のある請求であるという賃料補充説に対して明確な批判をしている。       1994.3.


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第三者に経営全般の管理をさせ一定の金銭の支払を受けていた関係が、営業委任であるとされた事例

2007/03/28 10:46

 判例紹介


 賃借建物で店舗営業をするにあたり第三者に営業全般の管理をゆだね月々一定の金銭の支払を受けている場合に建物の転貸にあたるとされた事例 大阪高裁平成5年4月21日判決。判例時報1471号93頁)


 (事案)
 Y
(借家人)はX(家主)から賃借する建物(以下本件建物という)で飲食店(牛丼屋)を営業するにあたり、Zとの間で経営委託契約を締結してZに営業全般の管理をまかせ、営業の賃借の対価として月々50万円(1月と12月は70万円)をZから受け取っている。


 Xは、YXの承諾なく本件建物をZに転貸しZが本件建物で飲食店を経営しているとして、無断転貸を理由に賃貸借契約を解除しY及びZに対して本件建物の明渡等を求めた。


 Yらは飲食店はYがオーナーとして経営するもので転貸の事実はないとして争った。


 第1審判決(神戸地裁平成4年6月19日判決。1993年7月15日付本紙の「判例紹介」欄で紹介)は、店舗の営業許可はYが取得していることメニューはYの意向で牛丼のみとされ、本件建物での店舗経営の最終判断権はYに帰属しており、営業の一部の委任に過ぎず転貸に該当しないとしてXの請求を棄却し、Xはこれを不服として控訴。


 (判決)
 判決は、「(ZYに対し、毎月定額の50万円(1月と12月は70万円)を支払うものとされ、現実にこれまで支払われてきたこと、(Yは本件建物での牛丼屋の経営に関与していないこと、Zが営業全般の管理を行っているが、その営業事績の報告はされていないこと、(中略)右定額の金員はZの計算と危険負担のもとに、右営業による損益や利益金の多少にかかわらずYに支払われるものであることが推認されること、()本件店舗における牛丼屋の営業、すなわち、材料の仕入れ、派遣従業員の給料、光熱費その他必要経費の支払や売上代金の管理等は、すべてZの計算においてなされ、Zの預金口座を利用して行われていること」の点を重視し、YZ間の契約は「Zの計算で営業を行う狭義の経営の委任契約であり、実質は営業の賃貸借であると認めるのが相当である」としたうえで、「右契約の効果として、YとZに対し営業の基盤である本件建物の利用を可能ならしめる義務を負い、そのためには本件建物の占有を移転することを要し、Zは本件建物を利用して賃借営業を自己の計算で営むことができるが、そのうちの本件建物の利用関係の移転はXとの関係では建物の転貸借に当たる」として、Xの主張を認めた。


 (寸評)
 本件のような経営委任契約が建物の転貸にあたるかどうかについては、営業に対する賃借人の支配の程度・営業の名義・賃借人に支払われる金員の決め方などによって総合的に判断するとされているが、その判断は微妙である。本件のように賃借人に対する月々の支払が定額で第三者に営業全般の管理を委ねているような場合には転貸と認められる可能性が大きい考えたほうが良い。       1994.4.


(東借連常任弁護団)


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第三者に営業全般の管理を委ね、月々一定の金銭の支払を受けているている場合は転貸に当たるとされた事例

2007/03/27 10:34

 判例紹介


 店舗賃借人が第三者に経営全般の管理をさせ一定の金銭の支払を受けていた関係が、営業の委任であって転貸でないとされた事例 神戸地裁平成4年6月19日判決、判例時報1451号136頁)


 (事案)
 乙は甲から店舗を借り、牛丼の吉野家との間でフランチャイズ契約を締結し牛丼屋を経営してきた。昭和55年吉野家が会社更生法に基づく更生会社となり乙はフランチャイズ契約の対象から外された。


 そこで乙はレストラン等を経営する丙に、吉野家と同様の形態で牛丼屋を経営していきたいと助力を求め、丙との間で新たに牛丼専門店の経営委託に関する契約を締結した。店舗の屋号は「牛丼屋」とした。


 「牛丼屋」の経営実態は、丙が材料の仕入れ、派遣従業員の手配、店舗営業全般の管理を行い、且つ費用の計算、支払及び売上代金の管理等を丙の預金口座を使用して行い、これらの管理、計算に基づき、売上代金から所定の経費、経営管理の対価を差し引いた金額(1月と12月は70万円、その他の月は50万円)を乙に対し支払っている。


 また、店舗の営業許可は乙において取得しており、メニューは乙の意向により吉野家時代と同じく牛丼のみとし、丙が他所で経営している食堂とは異なっている。


 (判決要旨)
 「本件建物における牛丼屋の営業について、乙は最終的な決定権を有しており、その経営主体であるということができ、乙と丙との関係はあくまでも牛丼屋の営業に関してその業務の一部を委任するものであって、丙にその経営を全面的に委ねたものではないし、営業を賃貸したものでないと認められる。従って乙と丙との間には本件建物についての賃貸借契約は存在せず、丙の同建物の利用は、乙が有する賃借権についての履行補助者ないしは占有補助者としてのものであると評することができ、独立の占有権限又は独立の占有を有しているものではないと解されるから、甲主張の転貸の事実を認めることはできない」


 (寸評 )
 営業の委任か転貸かは、まぎらわしことが多い。形式は営業の委任と銘うっていても実際は転貸に当たる場合もある。要は経営実態によって判断するほかはなくその場合の着眼点は、営業に対する賃借人の支配の程度、第三者の店舗使用の独立性、営業名義、委託料の決め方などであるが、結局はそれらを総合して判断することになる。


 この判決の事案は、大変微妙だと思われる。判決の認定する経営実態も、営業許可名義とメニューの点を除けば、第三者丙に殆ど任せっぱなしとみることもできるし、それに丙から賃借人乙に対する支払も毎月定額であることと、水道使用契約は丙となっていることなどを考え合わせると丙の独立性もかなりあるように思われる。私の言いたいのは、分店を第三者に「任せる」ときは、その内容を十分慎重にしないと転貸と認定されて元も子もなくなってしまうといことだ。      1993.7


(東借連常任弁護団)


東京借地借家人新聞より


 ここで採り上げた判例は、後日、控訴審の大阪高裁(平成5年4月21日判決)で営業委任契約が否認され、転貸と認定された。控訴審判決は、こちらの「判例紹介」扱ったものである。




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ビルの一室の使用が店舗経営委託契約ではなく、賃貸借契約と認められた事例

2007/03/26 09:41

  判例紹介


 ビルの一室の使用関係が、店舗経営委託契約ではなく、賃貸借契約と認められた事例 大阪高裁平成9年1月17日判決、判例タイムス941号)


 (事案)
 賃借人はビルの一室を賃借してスナックを経営していたが、契約書は店舗経営委託契約書であった。そして、契約書には、次のことが定められていた。
 @経営の委託であること、A経営者が保証料250万円を預けること、B内装工事は建物オーナーが施工して、冷蔵庫、ガスレンジ、棚セット、シンク台、ガス台、イス、湯沸し器、おしぼり器などの設備を引き渡すこと、C経営者は建物オーナーに分配金として月13万2000円,共益費1万円を支払うこと、E本契約を更新する場合は、分配金は5%増額すること。


 しかし、スナックの飲食店営業許可は賃借人の名義で取得し、電話、ガスの契約名義も賃借人であった。スナックの営業時間、営業日の決定変更、従業員の採用、売上の収受、経費の支払もすべて賃借人が自分の裁量で行っていた。収支決算の報告については建物オーナーからの要求は一度もなく収支決算報告をしたこともなかった。スナックの所得税申告も賃借人が行い、税金も賃借人が支払っていた。


 賃借人は、この契約は経営委託ではなく、建物賃貸借であると主張して、賃借権の確認を求めて提訴した。一審では、賃借人が敗訴。高裁で逆転して賃借権が認められた。


 (判決趣旨)
 「本件契約書では店舗経営委託契約とされているものの、そこでの店舗の経営は経営者の名義で、その計算と裁量により行われ、建物オーナーがその経営に関与することはなく、分配金、共益費の名義の金員は店舗経営による収益費にかかわりなく定額であることからすると、本契約は、店舗経営委託契約の性格を持たず、かえって経営者に本件物件と内装、器具を飲食店のために自由に使用収益して、その収益の取得することを許し、その対価として一定額の金員を受領することとする建物賃貸借の性格を有することは明らかである


 (説明)
 飲食店の賃貸借については、店舗を貸す専門の業者がいて、自分で内装、設備を整え、設備込みの賃料で賃貸する。
 契約書は、賃貸契約にしないで、店舗経営委託名義にするというケースがある。そして、契約更新のときなどに、更新の条件で折り合いがとれないと、本件のような係争になる。


 一審の判決は、契約書の文面を形式的に読んで、賃貸借でないとしたが、高裁では、営業の実態を見て実質的に賃貸借契約であることを認めた。


 ポイントは建物オーナーへの支払が毎月決まった額であること、店舗の経営のあれこれをすべて賃借人の裁量で行っている点である。       1998.7.


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更新料債権の消滅時効と更新料支払の合意は法定更新の場合には効力がない

2007/03/24 09:23

 判例紹介


 家主から借家人に対する建物明渡請求訴訟継続中でも、更新料債権の消滅時効の進行は妨げられないとされた事例および更新料支払の合意は法定更新の場合には効力がないとされた事例 (東京地裁平成3年5月9日判決、判例時報1407号80頁)


(事例)
 不動産賃貸・管理を業とする会社が、家主として借家人との間で、昭和55年1月30日、期間5年で建物を賃貸したが、その際契約更新時には最終賃料の2倍相当の更新料を支払うとの合意が成立した。


 ところで、家主は、昭和55年7月、借家人に対して、債務不履行があったとして賃貸契約を解除して建物明渡請求訴訟を提起したが、昭和62年5月、訴訟上の和解が成立した。


 その後、家主は、平成2年4月、借家人に対し、昭和60年1月31日の更新および平成2年1月31日更新を理由とする更新料の支払を請求した。


 (争点)
 1、昭和60年の更新を理由とする更新料債権について商事消滅時効が成立するか。
 2、平成2年の更新(法定更新)を理由とする更新料について、更新料支払の合意は賃貸借が法定更新された場合にも及ぶか。


 (判決の要旨)
 について、判決は、家主が借家人に対して建物明渡請求訴訟を提起していたとしても、これによって権利行使について法律上の障害はないから、更新料債権の消滅時効の進行は妨げられず、商事消滅時効5年の経過によって消滅しているとした。


 2について、判決は、本件建物賃貸借契約書の文書上、更新料支払義務は合意更新の場合を念頭に置いて定められたものと認められることおよび建物賃貸借契約では法定更新されると期間の定めのない賃貸借となり借家人はいつでも解約申入れを受ける危険を負担することを理由として、更新料の支払の合意にはその効力がないとした。


  (短評)
 更新料債権が、他の債権と同様に一般には10年、商事について5年で時効消滅することについては、事新しいことではないが、家主が賃貸借契約解除を理由として建物明渡請求訴訟を提起している場合である点に問題がある。


 この場合、家主としては明渡を請求しているので、他方で更新料の請求をすることは賃貸借契約の存在を認めることになるため実際には更新料を請求することができない立場になる。


 しかし、更新料を請求できない立場といっても、それは事実上の問題にすぎず法律上権利行使をすることの障害になるものとはいえない以上時効の進行を妨げないというべきであり、本判決は、妥当な判決といえる。


 なお、本判決は、更新料支払特約の合意が法定更新の場合に及ばないとする事例の1つである。   1992.5.


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*更新後も連帯保証人は借主の債務保証義務がある

2007/03/23 10:05

 判例紹介


 期間の定めのある建物賃貸借契約の更新と保証人の責任 最高裁第一小法廷平成9年11月13日判決。判例タイムス969号126頁以下)


(事実)
 建物の賃借人の連帯保証人が、賃貸人に対して、合意更新された契約には民法619条2項により連帯保証の効力が消滅した。


 仮にそうでなくても、長期にわたる賃借人の賃料未払いの事実を連帯保証人に通知することもなく合意更新したうえ、未払賃料を連帯保証人に対して請求することは信義誠実の原則に反するとして、連帯保証債務の不存在確認を求めていた事案。連帯保証人の上告棄却。


(判旨)
 「期間の定めのある建物の賃貸借において、賃借人のために保証人が賃貸人との間で保証契約を締結した場合には、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情のない限り、保証人が更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責を負う趣旨で合意されたものと解するのが相当であり、保証人は賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認められる場合を除き、更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを免れないというべきである」。


(寸評)
 世上、よく生じる保証人の責任のうち、建物賃貸借契約の保証人の責任に関する最高裁の判断として実務に与える影響は大きい。


 本件の第一審は、更新前後の契約間には法的同一性がないとして更新後の保証人の責任を否定した。学説上もこの立場を採る有力説があるが、裁判の実務上の大勢は、最高裁の判断と軌を一にしているようで、学説上の通説でもある。


 本件は、期間の定めのある建物の賃貸借に関するものであり、土地賃貸借契約の更新の場合には別異に解釈される余地は充分にあり、それが相当といえる。


 評者は、この最高裁判決には批判的である。保証意識の推測として、当然に法定更新を前提とするのは保証人に酷である。     1998.11.


(東借連常任弁護団)


東京借地借家人新聞より


                         こちらの「判例紹介」参照




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管理会社に賃料を払っていた借主が貸主に直接払えといわれての供託は有効

2007/03/22 10:37

 判例紹介


  賃貸人から賃貸用建物の管理を委託されていた会社に賃料を支払っていた賃借人が賃貸人から直接に賃料の支払いを求められた場合に、債権者不確知を理由として行った弁済供託の効力を有効とした事例 東京地裁平成15年2月19日判決判例タイムス1136号191頁以下。)


(事案)
 建物の賃貸人Xが、賃借人Yに対して、その賃料2か月分が未払いとなっており、遅延損害金を付加して支払えと求めた。これに対し、Yは2ヶ月分の賃料は債権者不確知を理由として弁済供託をしており支払義務はないとして争った事案。Yが弁済供託をしたのは、建物を賃借していたところ、Xが競売により建物を取得し、賃貸人の地位を承継。Xは承継後、Zに対し建物の管理を委託し、ZとYの間で賃料の改定の合意もされた。その後、XとY間で建物の管理をめぐり争いが生じ、そのことを契機にYは、2ヶ月分の賃料について、債権者不確知を理由に弁済供託した事情にある。


(判旨)
 「前認定事実によればZがYに対して本件建物部分の賃料の支払いを求めて訴えを提起した場合を想定すると、当該訴訟の受訴裁判所が最終的にどのように判断するか否かはともかく、当事者であるYにおいてZがXの単なる代理人にすぎず、Zが自ら当事者能力を有するわけでもなくXに代わって当該訴訟を提起したとしても、いわゆる任意的訴訟担当が許される場合に当たらないとして、Zの請求ないしその前提となる当事者能力を排斥し得ることが明白であったとはいえず、Xを賃貸人と明記した賃貸借契約書も取り交わされないままZがXとの管理委託契約に基づき、賃料も改定し、本件建物部分の明渡しを求める調停も申し立てている事情も併せ考えると、Yにおいて、Zを本件建物部分の賃貸人であるか、賃貸人でないとしても、自ら固有の権限で訴訟上でも、その取立てが可能な権限を有する立場にあると判断してしまうことは無理からないところというべきであって、Zの立場が現に本件建物部分の賃料の固有の取立権者であったとすれば、債権者不確知を理由とする弁済供託にいう「債権者」と同視して差し支えなく、実際にはZに固有の取立権限がなかったとしても、YがZを取立権者であると判断したことに過失はないといわなければならないから、本件供託は少なくとも債務者であるYにおいて過失なく債権者である本件建物部分の賃料の賃貸人ないしその取立権者を確知することができない場合であったとして、有効なものであったと認めるのが相当である」


 (寸評)
 判旨は妥当といえる。Zの立場がXの単なる代理人であった場合には、Zに対する弁済供託の効力は否定されると思われる。参考になる事例として紹介した。 2004.4.


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*家賃差押え後に建物を買った者は家賃取得で差押債権者に対抗できない

2007/03/21 11:14

 判例紹介


 家賃が差押えられた後に建物を買った者は家賃の取得について、差押債権者に対抗できないとされた事例 最高裁平成10年3月24日判決・判例時報1639号45頁)

(事実)
 Xは、平成3年3月、建物所有者(家主)Aに対する判決に基づき、Aの借家人Bに対する家賃債権を差押えた。


 Yは、平成4年12月に家主Aから右建物を取得して所有権移転登記を得た。そして、Yは借家人Bに対し、家賃を自分に支払うよう請求した。
 そのため、借家人Bは、平成5年2月以降、債権者不確知と差押えの両者を原因として、家賃を供託した。


 そこで、XはYに対し、供託金を取得する権利が自分にあることの確認を求めて本件裁判を起こした。
 東京高等裁判所は、平成6年11月29日、『家賃の差押中に建物所有権の移転があっても家賃債権の差押との関係では右移転は無効であって、家賃債権は依然として前の家主に帰属するものとして、右差押えの効力は及ぶもので、Xは、Yが建物所有権を得た後も家賃債権を取得できると解すべきである』と判示した。


 Yは、これを不服として、最高裁判所に上告した。

(争点)
 家賃債権は、差押債権者と建物の譲受人のいずれに帰属するか。

(判決要旨)
 最高裁判所は、『自己の所有建物を他に賃貸している者が第三者に右建物を譲渡した場合には、特段の事情のない限り、賃貸人の地位もこれに伴って右第三者に移転するが、建物所有者の債権者が賃料債権を差し押さえ、その効力が発生した後に、右所有者が建物を他に譲渡し賃貸人の地位が譲受け人に移転した場合には、右譲受人は、建物の賃料債権を取得したことを差押債権者に対抗することができないと解すべきである。けだし、建物の所有権を債務者とする賃料債権の差押えにより右所有者の建物自体の処分は妨げられないけれども、右差押えの効力は、差押債権者の債権及び執行費用の額を限度として、建物所有者が将来収受すべき賃料に及んでいるから、右建物を譲渡とする行為は、賃料債権の帰属の変更を伴う限りにおいて、将来における賃料債権の処分を禁止する差押えの効力に抵触するというべきだからである』と判示した。

(短評)
 近時、銀行等の債権者が家賃を差押後、建物が譲渡されるケースが多発している。
 この場合、借家人は、新家主に家賃を支払ってはならず、差押命令に従って差押債権者に支払うか、または、家賃支払履行地の法務局に供託するかのいずれかの方策を採るべきである。


(東借連常任弁護団)


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*建物競売の場合に借地権譲渡許可の裁判で敷金の差し入れを命じた事例

2007/03/20 15:18

 判例紹介


 建物競売等の場合における借地権譲渡許可の裁判で、敷金(保証金)を差し入れることを命じた事例 最高裁平成13年11月21日決定、判例時報1768号86頁)


(事案の概要)
 YはAに対して、堅固建物所有を目的として、土地を賃貸し、Aはその土地上に5階建ビルを建築して所有していた。
 ところが、Aの建物について競売が申し立てられ、Xが借地権付建物として競落した。


 XはYに対して、借地権譲渡の承諾を求めたが、Yが承諾しなかったので、Xは、借地借家法第20条に基き、裁判所に対して地主の承諾に代わる許可を求める申立てをした。
 ところで、本件においては、もともとAがYに対して敷金(保証金)1000万円を差し入れていた経過がある。
 鑑定委員会は、申立てを容認するのが相当としたうえ、付随的裁判としてXに対して譲渡承諾料の支払をさせるほか、敷金として金1000万円を差し入れさせるのが相当であるとの意見を出した。


 大阪地裁及び大阪高裁は、借地権譲渡を許可し、付随的裁判として、譲渡承諾料の給付のみを命じ、敷金に関しては、借地借家法第20条1項後段の付随的裁判として敷金の差し入れを命ずることはできないと判示した。


 これに対し、Yは付随的裁判として敷金の差し入れを命ずべきであるとして、もしそれを命じないのであれば、申立てを棄却すべきであると抗告許可の申立てをした。


(裁判)
 最高裁は、「旧賃借人が交付していて敷金の額、第三者の経済的信用、敷金に関する地域的な相場等の一切の事情を考慮した上で、法20条1項後段の付随的裁判の1つとして、当該事案に応じた相当な額の敷金を差し入れるべき旨を定め、第三者に対してその交付を命ずることができるものと解するのが相当である」として原決定を破棄し、大阪高裁に差し戻した。


(短評)
 競売・公売により借地権付建物を取得した場合、競落人には譲渡の承諾に代わる許可の制度が設けられている。そして、許可の申立てを認容する場合、裁判所は当事者間の利益の衡平を図るため、必要があるときは、付随的裁判として借地条件を変更し、又は財産上の給付を命ずることができるとされている。(借地借家法第20条)


 ところで、これまで敷金(保証金)の差し入れを命ずることができるかどうかについては最高裁の判例がなかったところ、今回の決定により、敷金(保証金)の差し入れも借地条件の変更・財産上の給付とされたことから、今後は、競落に当たって、従前の敷金(保証金)の有無・金額を調査する必要があり、また、敷金(保証金)の差し入れを命じられることがあることを覚悟する必要が出てきた。         2002.3.               


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*法20条1項後段の付随的裁判で敷金の交付を命ずることが出来るとした事例

2007/03/19 09:55

判例紹介


  地借家法20条1項後段の付随的裁判として敷金を差し入れるべき旨を定めその交付を命ずることが出来るとした事例 最高裁第2小法定・平成13年11月21日決定。判例タイムス1079号175頁)


(事案)
 借地上の建物を競売により取得した者が、借地借家法20条に基づき、賃借権の譲渡について借地権設定者である抗告人の承諾に代わる許可申立事件。


 抗告人は昭和57年10月14日、その所有土地を堅固な建物の所有を目的とし、期間を平成38年12月14日までと定めて、A会社に賃貸。Aは敷金1000万円を右契約によって生ずるすべての債務を担保するために、契約が終了し土地明渡し時に返還を受ける約定で、抗告人へ差し入れていた。


 その後、Aは借地上の建物について担保権の実行による競売をされ本件抗告の相手方が競落して建物の所有権を取得。右競売事件の物件明細書には、本件土地賃借権の期間は昭和57年10月14日から44年間、賃料月額19万1150円、敷金1000万円と記載されていた。


 借地非訟手続において抗告人は、申立の棄却を求めると共に、許可を与える場合には付随裁判として地代の増額と財産上の給付およびAが抗告人に交付したいたものと同額の敷金の交付を求めていた。また、Aの敷金返還請求権に対し、国は差押をしていた。


 原々審および原審は、敷金については借地借家法20条1項後段の付随的裁判としてその交付を命ずることができないとしていた。原決定を破棄、高裁に差し戻しを命じた。


(判旨)
 「土地の賃借人が賃貸人に敷金を交付していた場合に、賃借権が賃貸人の承諾を得て旧賃借人から新賃借人に移転しても、敷金に関する旧賃借人の権利義務関係は、特段の事情のない限り新賃借人に承継されるものではない(最高裁昭和53・12・22判決)。したがって、この場合に賃借権の目的である土地の上の建物を競売によって取得した第三者が土地の賃借権を取得すると、特段の事情がない限り、賃貸人は敷金による担保を失うことになる、そこで、裁判所は上記第三者に対し法20条に基づく賃借権の譲受けの承諾に代わる許可の裁判をする場合には、賃貸人が上記の担保を失うことになることをも考慮して、法20条1項後段の付随的裁判の内容を検討する必要がある。その場合、付随的裁判が当事者の利益の衡平を図るものであることや、紛争の防止という賃借権の譲渡の許可の制度の目的からすると、裁判所は旧賃借人が交付していた敷金の額、第三者の経済的信用、敷金に関する地域的な相場等の一切の事情を考慮した上で、法20条1項後段の付随的裁判の一つとして、当該事案に応じた相当な額の敷金を差し入れるべき旨を定め、第三者に対してその交付を命ずることができるものとするのが相当である。」


(東借連常任弁護団)


東京借地借家人新聞より


 同じ最高裁判決(平成13年11月12日)を扱っている2006年7月18日の「判例紹介」も参照して下さい。


 借地借家法
第20条(建物競売等の場合における土地の賃借権の譲渡の許可)
 第三者が賃借権の目的である土地の上の建物を競売又は公売により取得した場合において、その第三者が賃借権を取得しても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡を承諾しないときは、裁判所は、その第三者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、借地条件を変更し、又は財産上の給付を命ずることができる。
2 前条第2項から第6項までの規定は、前項の申立てがあった場合に準用する。
3 第1項の申立ては、建物の代金を支払った後2月以内に限り、することができる。
4 民事調停法(昭和26年法律第222号)第19条の規定は、同条に規定する期間内に第1項の申立てをした場合に準用する。
5 前各項の規定は、転借地権者から競売又は公売により建物を取得した第三者と借地権設定者との間について準用する。ただし、借地権設定者が第2項において準用する前条第3項の申立てをするには、借地権者の承諾を得なければならない。




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賃料額確認の訴えが抽象的な合意だけでは争訟に当たらないとされた事例

2007/03/17 10:14

 判例紹介


 不動産賃貸借における賃料額の確認を求める訴えが、当事者間に「公正な額で決定する」といった抽象的な合意があるだけでは「法律上の争訟」に当たらないとして却下された事例 東京高裁平成13年10月29日判決。判例時報1765号49頁)


(事案の概要)
 一、池袋駅西口に大型ビルを建設する事業に参加したX(常盤興業)は、ビルの3階部分(本件建物)の所有者となった。事業推進中、XとY(東武鉄道)は、Xを賃貸人、Yを賃借人とする賃貸借契約を締結しようとしたが、賃料額について合意に至らず、この点については「今後、XとYとは、それぞれ調査研究することとし、各々信用ある第三者の専門家に他の類似の百貨店の賃貸条件の調査を依頼し、それを持ち寄り、これらを尊重し、誠意をもって協議し、公正な額で決定する」との合意書を取り交わした。


 二、平成4年ビル竣工、Yは東武百貨店に本件ビルを転貸した。月額賃料としてYは2063万円を、Xは約4650万円を、それぞれ主張して折り合いがつかず、Xが提訴。東京地裁は2593万円が相当との判決をした。
 YもXも控訴。東京高裁は内容に入らず門前払い。


 (判決要旨)
 賃料額について右の合意書の程度の抽象的な合意しか成立していない本件においては、裁判所が合意に基く賃料額を証拠によって認定することは不可能。また裁判所に裁量によって賃料額を定める権限を付与した法律は存在しない。
 本件は具体的な権利義務に関する争いではあるが、右の合意書の程度の抽象的な合意があるだけでは、現行法のいずれを適用しても具体的な賃料額を確認するという結論は得られないのであるから、本件訴えは「法律上の争訟」に当たらず、裁判所の権限に属しないことについて裁判を求めるものであるから不適法であり、却下は免れない。


(解説)
 この判決は、XY間の当初賃料額(いったん決った賃料額の増減ではないことに注意)について「誠実に協議し公正妥当な賃料額を定めるものとする」とした抽象的な合意しかない場合には、裁判をすることができないとして一審判決を取消してXの訴えを却下(門前払い)した。


 賃貸借契約をはじめて締結する場合に賃料額が決らないままスタートするという例はほとんど見かけないが、なぜこの判例を紹介したかというと、借地の更新料について契約書の中に「更新時には更新料を支払う」との文言がある場合、これが「抽象的な合意」であり、裁判にはなじまないということを知ってほしいと思ったからだ。


(東借連常任弁護団)


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権利金の性格をもつ敷金が新所有者に返済債務の承継が認められた事例

2007/03/16 10:18

 判例紹介


 建物賃貸借契約に伴って差し入れられた金員が敷金と権利金との性質を併有している場合において新所有者による返還債務の承継が認められた事例 東京地裁平成12年10月26日判決、金融・商事判例1132号)


 (事案の概要)
 賃借人は、賃料月額22万6380円でラーメン店のために建物1階を賃借し、敷金1078万円を差し入れた。敷金額は坪当たり80万円で計算され相場と認識されていた。契約終了時に1割5分を償却し、明渡し3ヶ月後に返還するという特約があった。建物所有者の抵当権者が競売を申し立て、競落した新所有者は、敷金の返還債務となる額は、賃料の7ヶ月分相当の158万4660円であると、訴訟を起こした。


  (判決要旨)
 本件敷金は賃料の48.5倍であって不払い賃料の担保としては通常必要な範囲をはるかに超えている。坪単価で提案した金額を相場の敷金と当事者双方が認識していたことに鑑みると、本件敷金は、本件営業上の場所的利益の対価である「権利金」の趣旨も併有している。本件敷金についての契約条項によれば、基本的には債務の担保となる「敷金」であるとともに、「権利金」の性質も兼ね備えるものとして、賃貸借契約と密接に関連する重要な要素の一つとして合意したものである。そして、当事者間では、本件敷金は明渡し後に償却分を控除して返還されることが明確に合意されている。本件敷金の中の「権利金」の性質にのみ着目して、経済的意義を考えてみても、営業上の場所的利益の対価は、賃借人が賃借時に賃貸人から場所的利益を買い受ける対価として賃貸人に支払うものであるから、契約終了時には、対象建物を返還するのと引換えに、賃貸人が賃借人に対し原状回復として場所的利益をそのまま返還させることが合理的な対価の授受であると評価できる。このような当事者の意思に鑑みると本件敷金にかかる返還約束は純粋な敷金関係と同じく、本件賃貸借契約と密接に結びつき、かつ建物所有者である賃貸人の地位にとって重要な経済的意義を有する権利関係として、本件建物の所有権を取得した新所有者にも引き継がれるものと解するのが相当。


  (説明)
 建物の競売などで新所有者になった者が敷金、保証金、権利金等賃借人から交付された金員について返還債務を引き継ぐかどうかの問題である。建物所有者が変更したとき敷金は新所有者に承継される最判昭和44年7月17日)が、保証金は承継されない最判昭和48年3月22日)。


 権利金は格段の特約のない限り契約終了時にも返還を受けられない最高裁29年3月11日判決というのが判例である。敷金をめぐる賃借人と建物債権者との利害について、返還額を制限して債権者を優先しようとする現在の傾向の中で注目すべき判決である。


(東借連常任弁護団)




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供託中の従前の金額を減額しても契約解除の事由にならないとした事例

2007/03/15 10:39

 判例紹介


 供託中の従前の金額を減額して供託したとしても、それだけで契約解除の事由にはならないとされた事例 東京地裁民事49部平成13年6月15日判決 未掲載)


(事案)
 YはXより借地しているが、昭和54年9月分以降の地代の改定をめぐってXと争いが生じ、以来、供託を継続している。


 当初月額3947円を、昭和55年3月から平成10年6月分までは、4680円を、同年7月分から平成11年4月分までは1万920円をそれぞれ供託していた。


 ところが、Yは平成11年5月分からこれを7800円に減額し、平成12年4月20日に9万3600円(7800円の12ヵ月分)を供託した。


 Xは平成12年5月25日到達の内容証明郵便によりYに対し、平成11年5月分から12年4月分までの賃料につき従前の供託額1万920円と7800円の差額及び同年5月分1万920円を同月末日までに支払うよう催告し、これを支払わなかったときは、賃貸借契約を解除する旨の意思表示をしたが、Yは指定された日までに支払わなかった。


 そこでXは賃料不払いを理由に契約を解除し建物収去土地明渡しを求めた事案。X敗訴。


(判旨)
 「確かに前継続中にYが相当賃料を1万920円であると主張し、実際にも同金額で供託したところ、Xも前訴における弁論において同金額が相当賃料であることを争わなかったことが認められるものの、前訴はそもそも賃料額を確定するための裁判ではなく、本件賃貸借契約の存続期間の満了に基く土地明渡請求であることは前判示のとおりであるから、その口頭弁論における訴訟上の主張において一部争いのない部分があったとしても、それが本件賃貸借契約における賃料額に関する合意を変更するという実体法上の意思表示としての性質を有するものではない」。


 「借地法12条2項所定の相当賃料とは、客観的にみて適正な賃料を指すものではなく、賃借人が自ら相当と認める賃料をいうものと解されるから、原則として供託額が減額されたことだけをとらえて不当することはできない


(寸評) 
 当然の判決である。 しかし、借地人が自ら相当とする賃料がもともと近隣地代の実勢価格より低い場合とか、公租公課を下回っている場合に一方的に供託額を減額することは、債務不履行になることもあり、注意を要する。


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平成6年度の固定資産税評価が適正な時価を上回り違法とされた事例

2007/03/14 10:13

 判例紹介


  固定資産税台帳に登録された平成6年度の価格が賦課期日における適正な時価を上回るものとして違法とされた事例 東京高裁平成12年4月19日判決、判例時報1729号38頁)


(事実)
 自治省は、平成6年度の土地の評価について、地価公示価格あるいは鑑定価格の7割程度を目途とする旨の平成4年1月22日自治省3号事務次官通達(いわゆる7割通達)を発した上、平成4年7月1日を鑑定時点とし、平成5年1月1日を価格認定時点とし、その間の地価下落率を勘案し、時価の7割を目途として、標準宅地の価格を認定すべき旨の通知を発した。(平成4年11月26日自治省28号税務局資産評価室長通知)


 これに対して、従前の評価水準が地価公示価格の2〜3割であったのが、著しく高額な価格になったこと及び平成5年から6年にかけて大幅な地価下落があったことから、これらの点が評価基準に反映されていないとして都市部を中心に固定資産評価審査委員会に審査申出や審査決定に対する取り消し訴訟が相次いだ。


 本件は、原告らは、港区赤坂に所在する土地に係かる案件である。 1審の東京地裁判決は、平成5年1月1日から平成6年1月1日までの地価下落率を平成4年7月1日から平成5年1月1日までの間の地価下落率があるものと想定してこれを評価に反映させるのが相当としたが、東京都固定資産評価審査委員会は、これを不服として、東京高等裁判所に控訴を申立てた。


(争点)
 固定資産課税台帳に登録された価格が時価を上回るか否か。


(判決要旨)
 東京高栽判決は、平成5年1月1日から平成6年1月1日までの地価下落率33・5%が、最も地価下落率を正確に反映するものとして採用し、これを超える部分について審査の申出を棄却した決定を取り消した。


(短評)
 地方税法では、宅地に課せられる固定資産税は、賦課期日における価格に税率を乗じたものとされている。そして、価格については、「適正な時価」とされ、賦課期日については、3年毎の1月1日とされている。


 本判決は、7割通達について、登録価格が賦課期日における適正な時価を下回る場合には当該登録価格が是認されるが、登録価格が適正な時価を上回る場合には、その限度で取り消すとしたものである。このことは、7割通達が適正な時価を超えないよう控え目な算定をしていることを認めるものであり、結局、年間の地価下落率が3割を超えない限り違法にならないとしたものである。


 この結果、その後の平成9年、平成12年の評価替えについては、地価下落率が3割を超えない以上、違法の問題は発生しないことになる。なお、本件は最高裁に上告されており、今後の判断が待たれる。


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賃貸借及び転貸借された占有移転が抵当権の侵害にあたるとされた事例

2007/03/13 09:14

 判例紹介


 賃貸借及び転貸借としてされた占有の移転が、抵当権の不法な侵害にあたるとして、抵当権に基づく明渡請求が認められた事例 東京高裁平成13年1月30日判決。判例タイムス1058号180頁)


(事案の概要)
 建築会社Xは土地所有者Yから注文を受け、多額の建築資金を使ってホテルを建築してが、建築代金のほとんどが支払われなかった。


 Yは@残代金を割賦で支払うことを約束し、Aホテルの土地建物に残代金について抵当権を設定すること、B抵当権実行の場合には賃借権を設定する、CYがホテルを他に賃貸するときはXの承諾を得ることなどの約束をしてXからホテルの引渡しをうけた。


 Yは抵当権の設定登記はしたが、残代金は一切支払わず、Xの承諾なしにホテルをAに賃貸して引渡し、さらにAはXの承諾なしにホテルをBに転貸して引き渡した。また、賃料は当初は毎月の割賦金支払が可能な月500万円とされていたが間もなく月100万円に減額された。


 Xは、ホテルの土地建物につき競売の申立をするとともに、Yらを被告としてホテルの明渡しを求める本訴を提起したが、一審では賃借権に基づく明渡請求が棄却されたので控訴し、抵当権に基づく妨害排除請求を追加した。


(判決)
 「第三者の占有が抵当不動産の所有者の承諾のもとに行われていて、その意味では、その占有が権原のない占有とはいえない場合でも、その占有者の属性や占有の態様などが、買受希望者に、買受けた後の占有者などとのトラブルを予想させ、買受けを逡巡させるものであるとか、占有に関する状況が、買受希望者の当該不動産の価格に対する評価を不当に低下させ、その結果適正な価格よりも売却価格を下落させるおそれがある場合には、抵当不動産の交換価値が不法に妨げられていることに変わりはないものといわなければならない。―中略―  第三者が抵当不動産の所有者の承諾のもとに占有していることによって、このような状態が生じている場合には、抵当権者は、抵当不動産を適切に維持管理することを求めうる請求権があるから、これに基づきその侵害の排除を求めることができる。また、抵当不動産を賃貸借(転貸借)などにより他人に占有させ、又は賃借人(転借人)などとしてみずから占有する第三者があり、それらの第三者の行為が抵当不動産の交換価値の実現を不法に妨げるものであるときは、これらの第三者を相手方として、抵当権に対する不法な侵害の排除を求めることができるものというべきである。」として、抵当権に基づく明渡しを認めた。


(寸評)
 本判決は、本件の控訴中に出た平成11年11月24日付最高裁判所大法廷判決が傍論で認めた抵当権に基づく妨害排除請求としての明渡を具体的事例に即して認めたものである。通常の賃貸借をしている分には、本判決の適用はないので心配はない。


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賃料債権差押えは保証金返還請求権と賃料の相殺に優先するとした事例

2007/03/12 01:07

 判例紹介


 建物賃貸借契約の場合、抵当権者の物上代位権行使としての賃料債権の差押えは、賃借人の保証金返還請求債権と賃料債権との相殺に優先するとされた事例 福岡高裁平成12年7月18日、判例時報1749号56頁)


(事実)
 賃貸人は、平成2年10月1日、抵当権を設定した。賃借人は、平成8年10月1日、本件建物を賃借し、保証金500万円を差し入れた。 その後、抵当権者は、平成11年6月29日、賃料債権に対し、差押え手続をとった。
 それに対し、賃借人は、平成12年2月28日、保証金返還請求権と賃料債権とを対当額で相殺する旨の意思表示をした。


(争点)
 争点は、抵当権の設定登記後にその目的不動産の賃貸借契約がされた場合、抵当権者の物上代位権の行使としての賃料債権の差押えと、賃借人の保証金返還請求債権をもってする賃料債権との相殺のいずれが優先するかである。


(判決要旨)
 判決は、『本件抵当権設定登記後に本件賃貸借契約の締結、本件保証金の支払がなされ、かつ、本件保証金返還請求権が発生したことが明らかであるから、本件賃貸借は、元来、短期賃貸借の制限内で抵当権者に対抗できるにすぎないものであり、賃借人としては、本件賃貸借契約の締結に際し、既に本件抵当権が設定されていることを知り得たばかりでなく、賃料債権について物上代位権が行使されることがあり得ることも十分に予想できたのであるから、物上代位権の行使によって不測の損害を被るとはいえない。これに対し、相殺を物上代位権の行使による差押えよりも優先するものと解すると、抵当権設定者は、抵当権設定後にその目的物件に多額の保証金の支払を条件とする賃貸借契約を締結し、抵当権を無力化することや、また、抵当権者からの差押えの前に相殺することによって容易に物上代位権の行使を免れることができるようになるが、このような事態は抵当権者を不当に害するというべきである。以上によれば、抵当権設定登記により公示されている抵当権者の物上代位権の行使としての差押えは、賃借人の本件保証金返還請求と本件賃料債権との相殺に優先するものと解するのが相当である。』と判示した。


(短評)
 判例は、抵当権の目的である不動産について賃貸借がされている場合、抵当権者が物上代位により賃貸人の賃料債権について抵当権を行使できるとし、抵当権者において賃借人が供託した賃料の還付請求権について抵当権を行使することを認めている。


 したがって、不動産を賃借しようとする際には、その不動産について抵当権が設定されているかどうか調査することが必要であり、一般的には、賃貸借契約は抵当権設定後になるので、賃貸借契約に当たり多額の保証金を交付することは避けるべきである。


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市街地再開発組合が訴訟で賃借人に建物明渡を請求できるとされた事例

2007/03/11 02:45

 判例紹介


 市街地再開発組合が、建物賃借人に対し、民事訴訟手続によって建物明渡を請求することができるとされた事例 東京高裁平成11年7月22日判決判例時報1706号38頁)


(事実)
 六本木1丁目西地区市街地再開発組合が、権利変換処分によって施行地域内の建物の所有権を取得したので、建物賃借人の賃借権が消滅したとして、建物賃借人に対し、所有権及び都市再開発法第96条に基づき明渡を求めた。 これに対し、建物賃借人は、『市街地再開発組合は都市再開発法により建物の所有権を取得したのであるから、都市再開発法第92条2項に定める行政代執行の手続により、その権利の実現を図るべきである。』と主張した。


 (争点)
 本件建物の明渡は、行政代執行によってのみ実現されるべきものか、それとも施行者の民事訴訟手続による明渡請求も可能であるのか。


 (判決要旨)
 東京高等裁判所は、『施行者(市街地再開発組合)は、市街地再開発事業の実施主体であるが、権利変換処分により施行地区内の建物の所有権という私法上の権利を取得するという面では、私法上の権利の主体でもある。控訴人(建物賃借人)は、施行者は建物の所有権を取得しているが、所有権に基づく明渡請求をすることは許されないと主張する。そうすると、施行者は、自ら代執行をすることはできないから、自己の権利を実現するには第三者である都道府県知事による代執行を待つしか方法がないことになる。これは所有者が自らの判断と責任で自己の権利を実現することを認めないということを意味する。本来所有権は、その行使につき他人の掣肘を受けないことをもって、その本質的要素とするのであるから、控訴人の主張は、封建制を克服して成立した近代私法の体系に合致しないものであって、採用することができない。したがって、法が都道府県知事に代執行の権限を認めているからといって、これが施行者が所有者として自らの判断により所有権に基づく明渡請求をすることまで否定する趣旨であると解することはできない。』と判示した。


 (短評)
 市街地再開発事業においては、建物賃借人は、施行者から定められた期限までに、建物を明渡す義務があり、建物賃借人が期限までに明渡をしないときは、都道府県知事が施行者の請求により行政代執行法の定めにより代執行をすることが定められている。(都市再開発法第96条第2項) しかし、裁判所が、施行者が右の代執行を待つまでもなく民事訴訟手続による明渡請求を認めた点で、実務上参考になる。


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建物の所在地番が間違った登記で借地借家法の対抗力が認められた事例

2007/03/10 09:57

 判例紹介


建物の所在地番が誤って表示された登記について、借地借家法10条1項が定める対抗力が認められた事例 東京地裁平成10年11月27日判決、判例時報1705号98頁)


 (事案の概要)
 本件土地にはY所有の建物が建っていたが、その登記の所在地番が正しくは「470番地4」なのに「469番地」と誤って表示されていたため、競売手続を担当した執行官は本件土地上にY名義の建物登記がない旨の記載をした現況調査報告書を作成し、担当裁判官は右現況調査報告書に基づき、本件土地上にはY所有の建物が存在するが、Yはその借地権を競落人に対抗できないと記載した物件明細書を作成した。


 Xは、右物件明細書を見て本件土地には競落人に対抗できる借地権はないと考え、Yが借地をしている本件土地の所有権を競売による売却で取得し、Yに対し、本件建物の収去及び本件土地の明渡しを求め提訴した。なお、本件建物の登記の所在地番は、右物件明細書作成後Xの競落前の間に「469番地」から「470番地4」に更正登記されている。


 (判決)
 本判決は、「土地を買い受ける者は、現地を検分して建物の所在を知り、ひいて借地権等の土地使用権限の所在を推知することができるのが通常であるから、借地権のある土地上にある建物の登記が、錯誤又は遺漏により、建物所在の地番の表示において実際と多少相違していても、当該建物の同一性を認識し得る程度の軽微な誤りであり、殊にたやすく更正登記できるような場合には対抗力を認めるのが相当である」と判示したうえで、本件建物の登記の所在地番の誤りは、その登記の表示全体において建物の同一性を認識し得る程度の軽微な誤りであり更正登記も容易であった旨認定し、また、競売手続を担当した執行官は本件土地上にY名義の建物登記がない旨の記載をした現況調査報告書を作成し、担当裁判官は右現況調査報告書に基づき、本件土地上にはY所有の建物が存在するが、Yはその借地権を競落人に対抗できないと記載した物件明細書を作成している。登記の所在地番の誤りは、建物の同一性を認識できる程度の軽微な誤りではないというXの主張に対しては、執行官は、本件建物の登記の有無につき法務局出張所に調査依頼しただけで自らは登記簿の閲覧などの調査をしておらず、執行官が本件土地上に登記されたY所有の建物を認識し得なかったとはいえない旨認定して、YはXに対し借地権を対抗できるとの判断を下した。


 (寸評)
 借地上の建物の所在地番の表示を誤った登記が当該借地権の対抗力を有するか否かについては、一般的には更正登記によって正しい表示に変更できるかどうかがメルクマールとなると言われており(昭和40年3月17日付最高裁大法廷判決など)、本判決もこのメルクマールに基づいて下されたものである。


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借家人の保証人は法定更新後の債務を負わなくてよいとされた事例

2007/03/09 10:50

    判例紹介


  建物賃借人の保証人が法定更新後の賃借人の債務を負わなくてよいとされた事例 東京地裁平成10年12月28日判決、判例時報1672号)


(事案)
 (1)賃貸人Xは、Aに対し、約20年前に建物を賃貸し、YはAの連帯保証人になった。


 (2)XとAの間の賃貸借契約は逐次合意更新され、その都度Yは賃貸借契約に連帯保証人として署名捺印してきた。


 (3)平成6年2月、Aが賃料等を240万円滞納したので、Xは契約を解除し、AとYに建物明渡と未払賃料の支払を求める訴えを提起したが、訴訟外で和解が成立し、新たに期間を平成6年4月1日から2年間、賃料月額26万円、滞納が2ヵ月分に達したときは無催告で解除できる等の約定で賃貸借契約を結び、Yが連帯保証人になった。


 (4)平成8年3月の更新時には約200万円の延滞があったがYが全額精算したためXは契約を解除せず、契約は法定更新された。


 (5)Aはその後また延滞し、それが400万円を超えるまでになったので、Xは契約を解除し、Yにその支払を求める訴えを提起した。


(判旨)
 (1)XはYに対し右法定更新の経緯やその後の賃料滞納について直ちに知らせず、また連帯保証人への就任も依頼しなかったが、その理由は、Yが連帯保証人辞任の意向を有していることをXは承知しており、従前の経緯からしてそれもやむを得ないと考えていたからであった。


 (2)Aは、前件訴訟の際にも約240万円もの賃料を延滞していたものであり、それゆえ、本件賃貸借契約には賃料の滞納が2ヵ月分に達したときは無催告解除しうる旨の特約が付されていた。しかるに、本件法定更新時には延滞額が200万円にも及んだが解除されず、X自身ですら更新に消極的であったがそのまま法定更新されたものであり、さらに、Aの賃料延滞は更新後もおさまらず、最終的には400万円を超えるまでになり本件訴訟が提起されたというのであって、右のような事態が、本件連帯保証契約の当時、契約当事者間において予想されていたものであったとはいい難い。


 (3)以上の諸点を総合すれば、Yにおいて本件更新後は保証責任を負わないと信じたのも無理からぬことであったということができ、Aが本件更新後に負担した賃料等の債務については保証責任を負わない特段の事情があったものと解するのが相当である。


(寸評)
 結論は極めて妥当である。 ご承知のように、建物賃貸借契約の保証人は、特段の事情のない限り、更新後の賃貸借から生ずる債務についても責任を負うというのが判例の立場である。問題はこの「特段の事情」とは何かであるが、本件はその具体的事例として意味がある。
 保証人から相談を受けた場合は、よくその中味を吟味することが大切である。


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抵当不動産の賃借人が転貸して得る転貸賃料に差押が認められた事例

2007/03/08 11:42

 判例紹介


 抵当権が設定されている建物の賃借人がこの賃借建物を転貸していた場合において、賃借人(転貸人)が転借人に対して有する転貸料について、抵当権者がなした抵当権に基づく物上代位による債権差押命令の申立が認められた事例 東京高裁平成11年4月19日判決。判例時報1691号74頁)


(事案の概要)
 XはA所有の建物(以下本件建物という)に根抵当権を設定したが、その後、YがAから本件建物を賃借し、Yはさらに本件建物をBに転貸した。Xは、YがBに対して有する転貸料の支払請求権(転貸料債権)について根抵当権に基づく物上代位による債権差押命令を申立て、この申立が認められた。そこで、Yは、この債権差押命令に対して不服申立(執行抗告)をし、根抵当権に基づく物上代位は抵当不動産の賃借人が有する転貸料債権には及ばないと主張して争った。


(判決の要旨)
 本判決は、「抵当権者(本件ではXのこと)は、抵当権設定者(本件ではAのこと)が目的物を第三者(本件ではYのこと)に賃貸することによって賃料債権を取得した場合には、民法304条を準用する同法372条により、上記賃料債権について抵当権を行使することができる(最高裁判所平成元年10月27日判決)ところ、民法304条1項の「債務者」には、抵当不動産の所有者(A)及び第三取得者のほか、抵当不動産を抵当権設定の後に賃借した者(Y)も含まれ、したがって、抵当権設定後の賃借人(Y)が目的不動産を転貸した場合には、その転貸料債権に対しても抵当権に基づく物上代位権が及ぶと解するのが相当である」とした上で、本件については、「抗告人(Y)は、本件建物に根抵当権が設定された後、本件建物の所有者であるAから賃借したものであるから、これを転貸したことにより取得する転貸料債権には、根抵当権に基づく物上代位権が及ぶというべきである」として、Yがした本件抗告を棄却した。


(説明)
 バブル経済の崩壊に伴う不動産価格の暴落により抵当不動産の換価では債権の回収が不可能になったため、債権回収のための抵当権者による抵当不動産の賃料の差押が増加している。本件判決でも摘示しているように、最高裁判所は平成元年10月27日判決で抵当権に基づく抵当不動産の賃料の差押ができることを認めた。 


 問題は、本件のように抵当不動産の賃借人がこれを転貸して得ている転貸賃料についても差押ができるかであるが、これについては非定説・肯定説・限定肯定説と学説・裁判例が区々に別れている。


 裁判例は限定肯定説を取っているが、執行実務としては、東京地裁では本件判決同様、原則として賃貸借が抵当権設定後である場合に限定して肯定し、大阪地裁では所有者と賃借人が実質的に同一と認められる場合等に限定して肯定するなど裁判所によって区々の扱いがなされているようである。いずれにせよ、賃料の差押命令が裁判所から送達されてきた場合には、借地借家人組合や弁護士など専門家に相談して対処するのが無難である。


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貸共同住宅で隣人に嫌がらせを繰返し賃貸借の信頼関係破壊とした例

2007/03/07 09:47

 判例紹介


 共同住宅の一室の賃借人が共同生活上の秩序を乱し近隣の迷惑となる行為をしたとして契約解除が認められた事例 東京地裁平成10年5月12日判決。判例時報1664号)


(事案の概要)
 、Yら2名(50代と40代の男女)は平成7年7月、Xから鉄筋コンクリート5階建てのマンションの506号室を賃借して入居した。


 、Yらは入居直後から隣室505号室の住人に対し、同室から発生する音がうるさいなどと執拗に抗議を続け、夜中に両室の間の壁を叩くなどし、また、505号室入口の扉を強く足で蹴飛ばしたりした。一方、505号室の住人は平成4年に入居した幼児1人のある夫婦共働きの家庭であり、Yらが入居するまでは両隣りから音がうるさいなどと苦情をいわれたことはなく、Yら入居後も従前同様、夜9時には子供を寝かせ、朝、家族全員が起きて出掛けるという生活を送り、夜中に騒音を発したことは全くなかった。しかし、505号の住人はYらから執拗な抗議を受け、夜、壁を叩くなどの嫌がらせを受けたためYらと深く対立することになり、平成8年5月退去した。505号室は以後空室のままである。


 、Yらは隣室の507号室の住人(公務員の独身女性)に対しても同じように音がうるさいなどと何回も怒鳴ったり壁を叩くなどした。この住人も恐怖感を募らせ平成7年11月に退去した。


 、Yらは平成8年1月に507号室に入居した夫婦に対しても音がうるさいなどと大声で怒鳴ったりした。右夫婦はXの取り計らいで402号室へ移転した。


 5、Xは505、507号室の入居者の募集を仲介業者に依頼したが、506号室のYらの言動が噂になって斡旋を受けられず、今もって空室のままである。


(判決要旨)
 Yらは、隣室から発生する騒音は社会生活上の受忍限度を超える程度のものではなかったのであるから、共同生活における日常生活上通常発生する騒音としてこれを受容すべきであったにもかかわらず、これら住人に対し、何回も執拗に音がうるさいなどと文句を言い、壁を叩いたり大声で怒鳴ったりするなどの嫌がらせ行為を続け、結局これら住人をして隣室からの退去を余儀なくさせるに至ったものであり、Yらの右各行為は、本件契約の特約において禁止されている近隣の迷惑となる行為に該当し、また、解除事由とされている共同生活上の秩序を乱す行為に該当する。そして、両隣りの部屋が長期間空室状態でXが多額の損害を被っていることなどの前記事実関係によれば、Yらの各行為は賃貸借における信頼関係を破壊する行為に当たる。


(雑感)
 実はYらは本件の訴えを起こされて北区借地借家人組合に相談に来た。しかし組合はYらの主張の正当性にいま一つ自信が持てなかったので前の事件の弁護士に依頼するようすすめた。判決の認定事実の下においては結論は当然であろう。


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*貸ビルの譲渡で新旧家主間で合意しても借主の敷金返還を保護した事例

2007/03/06 09:53

判例紹介


 自己の所有建物を他に賃貸して引き渡した者が右建物を第三者に譲渡して所有権を移転した場合に、新旧所有者間において、従前からの賃貸借契約における賃貸人の地位を旧所有者に留保する旨の合意をしたとしても、これをもって賃借人に主張できないとされた事例 最高裁平成11年3月25日判決 判例時報1674号61頁)


(事実)
 Aは本件ビルを建築したが、すぐに本件ビルをBに売却した上、本件ビルを賃借した。その後、賃借人Xは、Aから本件ビルの6階から8階を賃借し、敷金3383万1000円を差し入れた。


 Aは、その後、Bから本件ビルを買い戻しさらにCに譲渡した。
 そして、CはYに信託譲渡した。


 右A―C、C―Y間の契約に際し、本件賃貸借契約における賃貸人の地位をAに留保する旨の合意がなされた。 ところが、その後、Aに破産宣告がなされた。


 賃借人Xは、右A―C、C―Y間の契約及び本件賃貸借契約における賃貸人の地位をAに留保する旨の合意がなされたことを知らないまま、Aに対して賃料を支払ったが、この間、A以外の者がXに対して賃貸人としての権利を主張したことはなかった。


 賃借人Xは本件賃貸借契約における賃貸人の地位がYに移転したと主張したが、Yはこれを争った。 賃借人Xは本件賃借部分から退去した上、Yに対して敷金の返還を請求した。


 これに対し、Yは@、Aから敷金の交付を受けていない。A、債務は信託の対象とならないからYは本件敷金返還債務を承継しないと主張した。


(争点)
 本件ビルの信託譲渡を受けたYは賃貸人たる地位を承継し、本件敷金返還債務を負担するか。


(判決要旨)
 最高裁判所は、『自己の所有建物を他に賃貸して引き渡した者が右建物を第三者に譲渡して所有権を移転した場合には、特段の事情のない限り、賃貸人の地位もこれに伴って当然に右第三者に移転し、賃借人から交付されていた敷金に関する権利義務関係も右第三者に承継されると解すべきであり、右の場合に新旧所有者間において、従前からの賃貸借契約における賃貸人の地位を旧所有者に留保する旨の合意をしたとしても、これをもって直ちに前記特段の事情があるものということはできない。』と判示した。


(短評)
 本件は不動産小口商品として売り出された物を、多数の者が共同で買い受け、これを信託銀行に信託譲渡した事案であるが、その際、新旧所有者間において前記合意をしたとしてもこれをもって賃借人に主張することができないとして、賃借人の敷金返還を保護したものである
 今後とも、賃借人は、いつ、賃貸人の破産や所有権の移転によって、損害を蒙るかもしれないので、注意を要するところである。


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電気料金の不当利得返還請求を借主に認める判決

2007/03/05 10:01

 判例紹介


 ビルの賃貸借契約において、賃借人から賃貸人に対し電気料金の不当利得返還請求が認められた事例 東京地裁平成14年8月26日判決、判例タイムズ1119号181頁以下)


 (事案)
 XはYから賃貸用ビルの7階を事務所として賃借していた。YがXから電気料として本来受領し得る金額よりも多額の金額を受領していたとして、Xが差額金の返還(110万4932円)を求めた。


 (判旨)
 
「本件事務所の賃借人であるXは、本件事務所内で使用した電気料の負担をすればよく、本件ビルの管理に要したあるいは要する費用、共益費については支払義務はないという条件で本件賃貸借契約を締結したと認められるのが相当である。そうだとすると、共用部分についてのX負担金等は通常管理費に含まれるものとして、これらを電気料金に含めて請求するYの主張は、その余の点を判断するまでもなく理由がないというべきである。なぜなら、これらの管理費に含まれるものは、本件賃貸借契約においてはYが負担するとの合意がされているからである」


(寸評)
不当利得返還は当然であ。共益費の名目で余分な費用を取る悪徳な賃貸人が多いのが現実であり、参考になる事例であろう。         2003.10.


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              こちらの「判例紹介」で扱った判決と同一のものです。(N)




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*判例紹介2005年12月16日最高裁判決

2007/03/03 10:23

判例紹介


 最高裁判例―賃借建物の通常の使用に伴い生ずる損耗について賃借人が原状回復義務を負う旨の特約が成立していないとされた事例 (最高裁2005年12月16日判決 裁判所時報1402号6頁、最高裁ホームページ)


 (事案の概要)
 賃貸人Yは地方住宅供給公社である。賃借人Xは平成10年2月にY住宅の1戸に入居し敷金35万3700円を差し入れた。Xは平成13年4月契約を解約して住宅を明渡したところ、Yは敷金から住宅の補修費用として通常の使用に伴う損耗についての補修費用を含む30万2547円(未返還分)を差し引き残額5万1153円のみを返還した。XはYに対し通常損耗は敷引きできないとして敷金の未返還分全部と遅延損害金の支払を求め本件訴えを提起した。Yは契約書に退去時の補修約定があり別表の補修負担区分表で通常の損耗も賃借人が補修するとの特約があるから敷引は有効であると争った。原審(大阪高裁)は、Yが主張した通常損耗の賃借人負担特約の効力を認めXの返還請求を棄却。Xが上告受理申立した。最高裁は逆転して特約の効力を否定し、大阪高裁判決を破棄し差戻した。


 (判決)
 「賃借物件の損耗の発生は、賃貸借という契約の本質上当然に予定され、賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は、通常、減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われている。そうすると、建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは、賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから、賃借人に同義務が認められるためには、少なくとも、賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約が明確に合意されていることが必要である」とし、Yの契約書の通常損耗を含むとする補修特約について「通常損耗を含む趣旨であることが一義的に明白であるとはいえず、したがって、本件契約書には、通常損耗補修特約の成立が認められるために必要なその内容を具体的に明記した条項はないといわざるを得ない」し、口頭での説明もないから、同特約の効力はない、とした。


 (寸評)
 最高裁は通常損耗は賃料に含ませて回収すべきものであって、敷金から差し引くことは原則としてできない旨を明示した。賃借人が負担すべき範囲を明確に限定した画期的で正当な判決であり、最高裁判決であるだけにその価値は非常に大きい。


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*地代の減額をしない旨の特約の有効性

2007/03/02 10:07

 判例紹介


  建物所有を目的とする土地の賃貸借契約において、賃料を減額しない旨の特約があっても、賃借人から借地借家法第11条の規定に基づく賃料減額請求権の行使が認められた事例 最高裁平成16年6月29日判決、判例時報1868号52頁)


(事案の概要)
 本件土地賃貸借契約は、「3年ごとに賃料の改定を行うものとし、改定後の賃料は従前の賃料に消費者物価指数の変動率を乗じ、公租公課の増減額を加除した額とするが、消費者物価指数が下降しても賃料を減額することはない」旨の特約が付されていた。


 これまで、本件土地の賃料は、本件特約に従って3年ごとに改定されてきたが、賃借人は、「その後土地の価格が4分の1程度に下落したことなどに照らして現在の賃料額は高すぎる」と主張して、賃貸人に対して賃料の減額を請求し、減額後の賃料額の確認を求めて本件訴訟を提起した。


 これに対し、原審の大阪高等裁判所は、「本件のような賃料の改定をめぐって当事者に生じがちな紛争を事前に回避するために、改定の時期、賃料額の決定方法を定めておくものであり、本件特約は、消費者物価指数という客観的な数値であって賃料に影響を与えやすい要素を決定基準とするものであるから有効である。したがって、本件特約に基づかない賃借人らの賃料減額請求の意思表示の効力を認めることはできない」として賃借人の請求を棄却した。


 そこで、賃借人は、原判決を不服として、最高裁に上告受理の申立てを行った。


(判決)
 最高裁は、上告受理の申立を受理し、「本件土地賃貸借契約においては、消費者物価指数が下降したとしても賃料を減額しない旨の特約が存する。しかし、借地借家法第11条1項の規定は、強行規定であって、本件特約によってその適用を排除することができないものである。したがって、賃貸借契約の当事者は、本件特約が存することにより借地借家法第11条1項の規定に基づく賃料減額請求権の行使を妨げられるものでないと解すべきものである。」と判示した。


(短評)
 本件は、賃料改定特約がある場合に、特約に基づく請求ではなく(本件では「減額することはないとの定め」があるためその余地はないが)、借地借家法第11条1項の規定に基づく賃料減額請求ができるかが争われた事案であるが、特約によっても減額請求を制限することはできないとのこれまでの最高裁判例を確認したものである。


 本判決は、賃料の減額をしない特約が明らかに存する場合においても、賃借人からの賃料減額請求が認められた点において事例的な意義がある。


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東京借地借家人新聞より


 借地借家法
 (地代等増減請求権
第11条 地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。


 強行規定
第16条 第10条、第13条及び第14条の規定に反する特約で借地権者又は転借地権者に不利なものは、無効とする。


 最高裁判決は、「借地借家法第11条1項の規定は、強行規定」としているが、借地借家法16条の強行規定のなかに11条は含まれていない。               




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かつて更新料を支払った事実があっても更新料の合意とは認められない

2007/03/01 10:17

 判例紹介


 借地の更新料について支払いの慣習があるとは認められないとした事例東京地裁平成16年5月21日民事37部判決。未掲載)


 (事実)
 Xは土地の賃貸人であるところ、平成12年12月末日に契約期間が満了したため借地人Yにたいし更新料700万円を請求した。Yは更新料支払いのため交渉には応じたが、結果は合意に至らなかった。


 そこで、XはYが前回の更新時に更新料として331万2500円を支払った際にも次の更新時にも更新料を支払うとの合意がなさねたと主張。また、仮に合意がなかったとしても目黒区中央町およびその隣接地域には、土地賃貸契約の更新に際し、更新料を支払う慣習が存在すると主張した。


 判決は、更新料を支払う旨の合意については、Yがかつて更新料を支払った事実があるというだけで更新料支払の合意があったことの根拠とすることはできない、としてXの主張を認めなかった。そして、更新料の支払いの慣習があるとするXの主張も認めず、Xの請求を棄却した事案。


 (判旨)
 「証拠によれば、本件土地の存在する東京都目黒区中央町及びその隣接地においては、土地賃貸契約の更新に際に、借地人から地主に対し、更新料が支払われる事例が多数存在することが認められる。しかい、このような更新料の支払は、当事者間の合意が成立した結果である場合が多いと認められる上、その支払の趣旨は、契約を円滑に進めるための代償であったり、賃料の補充を目的とするものであったりと多様であると認められるから、たとえ本件土地近辺において、土地の借主が地主に更新料を支払うことが多数見られるからといって、それをもって同地域に更新料支払の慣習があると認めることはできない


 (寸評)
  本件は東京借地借家人組合連合会(東借連)の会員の事件。判決の結論は当然であるが、繰返し訴訟が提起される更新料の支払請求について、更新料の性格に言及して支払の慣習を否定したものであり理論的な説得力のある判決の1つとして紹介した。          2005.4.


(東借連常任弁護団)


東京借地借家人新聞より




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